ジャンツァンノロブ プロフィール

ナツァギーン・ジャンツァンノロブ プロフィール
Нацагийн Жанцанноров/
Natsagiin Jantsannorov

ジャンツァンノロブ氏はモンゴルの中でもっとも有名な作曲家の一人です。
彼は曲の中にモンゴル国特有の伝統的な音楽要素(馬頭琴/筝)を取り入れたことで知られています。「国民的作曲家」としてモンゴル国でも特別な存在として高い人気があり、これまでに映画音楽をはじめ馬頭琴(モリンホール)アンサンブルなど30曲ほどの作曲しています。
ジャンツァンノロブ氏の「国民的作曲家」としての名声を高める契機となったのは1983年に開催された「第1回全国民間伝統芸能祭」の発案・プロデュース手法のすばらしさです。
1980年代のモンゴル国では第二次産業の急速な進展により、首都ウランバートルの都市人口がモンゴル国全体の50%を超えるほど集中し急激に都市化が進みました。このような近代的工業化のなかで地方から多くの牧民が都市ウランバートルに流入してきました。遊牧民から第二次産業の労働者へと都市流入者の生活環境の変化のなか、労働者間でさまざまな問題が生じ工業化の生産能力の停滞を招きかねない状況でした。
当時、党中央委員会職員であった作曲家ジャンツァンノロブ氏は都市部での核家族化の進展による伝統文化の断絶をはじめ、モンゴル国のアイディンティティやモンゴル固有の民族芸能の消滅の危機を敏感に感じとっていました。
しかし、当時の旧ソ連による社会主義国家圏への厳しいナショナリズム統制下のなかで、民族主義にむすびつく民族伝統芸能の復興を正面から唱えることは大きな危険をはらむものです。そこで都市部への人口流入や急速な工業化社会の進展の中で、モンゴル国民のアイディンティティの喪失がおきていることをまず訴え、民族伝統音楽で国民の一体感を結びつけることが結果的に都市部の労働者の生活を安定させ、工業化社会の生産性の向上に結びつくことになると党中央委員会へ進言したのです。そして1983年、「全国民間伝統芸能祭」を企画・提案し開催させました。

それから7年後の1990年、モンゴル国は複数政党制を導入し社会主義を事実上、放棄しました。
1992年には「モンゴル国憲法」を施行し、国名をモンゴル人民共和国からモンゴル国に改めました。
1990年代の社会主義国圏でおきた社会主義から民主主義への大きなイデオロギー転換の中で、モンゴル国は東欧諸国を中心とした他の旧社会主義国家よりも国民間の対立もなく民主化へむけてスムーズに移行したといわれています。
それは社会主義国家圏内での厳しいナショナリズム統制下でもモンゴルの伝統音楽の生命線を保ち、民族音楽を通じモンゴル国民のアイデンティティを守ろうとしたジャンツァンノロブ氏の試みが、モンゴルの民主化の際に極めて有効にはたらいたためといえるでしょう。

www.jantsannorov.com
Mail:contact@jantsannorov.com
誕生から現在まで
1948
108個の白い仏塔(ツァガーンソブラガ)がそびえたつエルデニ・ゾー寺院など世界遺産で有名な歴史ある都、モンゴル国ウブルハンガイ県生まれ。幼少時のアコーディオンで遊んでいた音楽体験が大作曲家への扉をひらく。
1975-79
75-79年ウクライナのキエフ国立チャイコフスキー音楽院(Tchaikovsky National Academy of Music)で作曲手法と音楽学を習得する
1983-92
83~92年モンゴル作曲家同盟委員長へ就任
80年代初頭にはモンゴル人民革命党政治局イデオロギー局員
文化省副大臣、国会議員として活躍
モンゴル国の文化政策に強い影響力を持つ
1983
モンゴル音楽研究者バトラー氏とともに第1回全国民間伝統芸能祭開催
1988
映画『マンドハイ賢妃』の劇場音楽制作
1989
モンゴル国家賞受賞
モンゴル・メロディ(Mongol Ayalguu)を作曲
1990
Hot Ashes(残り火)を作曲
1991
映画『悠久なる天神の加護の下』の劇場音楽制作
モンゴル民族楽器とホーミーの融合が美しいLet the Mount Burkhan Khaldun bless youを作曲
箏とオーケストラのための箏協奏曲(Concerto of Yatga)を作曲
1993
馬頭琴協奏曲(Morin huuriin Qualtet)を作曲
1994
声楽のための24の前奏曲を作曲
1995
白い仏塔(White Stupa)を作曲
1996
Oh my land,my stallion(Minii uls,minii mori)を作曲
2002
モンゴル国家賞受賞(2回目)
2009
N.エンフバヤル大統領よりモンゴル国大統領賞が贈られる。
著作物の紹介
1993『モンゴル語音楽用語小辞典』
1996『モンゴル音楽の12の肖像』
2005『オルティン・ドー用語研究書』
2006『モンゴル音楽の五音音階への論説集』
2009『モンゴル音楽における音感の原理解題集』など
作曲家の立場からモンゴル音楽を研究している音楽学者としても有名。音楽研究科教授として研究をまい進させている。